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仕事場の聖エリギウス

金銀細工師(聖エリギウス)の仕事場を訪れた一組の男女を描いた作品で、15世紀フランドルの富裕な市民生活の一部を見せる作例。初期フランドル絵画の現存作品のほとんどが宗教主題で、風俗画的描写の作品は少ない。
聖エリギウスは秤を持ち、後ろの飾り棚には彼が細工を施したらしい指輪や宝飾品が並んでいる。作業台に婚姻の証である朱色の帯が置かれていることから、結婚を控えた二人が指輪を注文しに来たところらしい。右の凸面鏡には家並みや二人を待っている従者らしい姿が映っている。
聖エリギウスに光輪がつけられていたが、後の補彩であることがわかり、1993年に取り除かれた。ファン・デル・ウェイデンの「聖母を描く聖ルカ」がブリュッセルの画家組合(聖ルカ組合)のために制作されたのと同様に、金銀細工師組合のために描かれたとも考えられている。
作業台の手前側面に記銘がある。聖エリギウスの表情のためなのか、ぎこちなさが感じられる。
1440年代
ペトルス・クリストゥス Petrus Christus
仕事場の聖エリギウス
1449年 板 油彩 99×85cm
ニューヨーク メトロポリタン美術館
世界美術大全集14 北方ルネサンス